優勝の可能性を繋ぐ勝ち点、近田監督が見た「選手の成長」

 5月10日、関西学生野球連盟春季リーグ戦の第4節の試合が大阪・南港中央野球場で行われた。京都大学は、1勝1敗で迎えた立命館大学との3回戦にて劇的なサヨナラ勝利を挙げ、勝ち点(立命大からは20年ぶり)を獲得した。試合前時点では、勝ち点1、3勝5敗の戦績でリーグ5位の位置につけており、優勝のためには1つも勝ち点を落とせない状況だった。この勝利により、京大は勝ち点2、4勝5敗とし、勝ち点4(=最大)での優勝の可能性を残した。

 試合後、京大・近田怜王監督は「チームとしては優勝に望みを繋いでいるというところと、それ以上に勝ち点が取れる、成長しているというところで、やっぱりこの一勝の重みは大きい」と話した。試合は、二回に先制を許し、一度は逆転するも終盤の八回に追いつかれる緊迫した展開。近年は僅差での試合展開がかなり増えてきた京大だが、あともう少しのところでなかなか勝ちきれないという苦い経験を重ねていた。それだけに「(八回に)追いつかれて、これまでならそのまま終わっていた所で粘ったということに、選手の成長が一番見えた。そこが何より大事なことだと思う」と指揮官も手応えを口にした。

 この日も、京大はエース・水江日々生(3 洛星)が先発のマウンドにあがる。水江は今季すでに3勝を挙げており、抜群の安定感を誇る右の好投手だ。二回に送球ミスの間に1点を失うも、連打を一度も許さない丁寧な投球で、5回を66球、被安打3、1失点とその力を十分に発揮する。4日前の試合では立命大を相手に完封勝利を挙げ、完投能力も見せた水江だったが、この日は5回でキッパリと交代した。この交代について、近田監督は「(水江が)イニングまたぎのところ、六回の整備後がしんどいというのを試合前に三原(大知・4 データアナライザ)から聞いていて、その辺で(水江を)代えたいというのは最初から聞いていた。あとは、その(五回が終了した)ときに愛澤(祐亮・4 宇都宮)がいけるかいけないかという判断だけだった」とデータアナライザ・三原の助言があったことを明かした。

 投手起用を任されている三原は「試合前から愛澤を(投手で)使うつもりでいた。投手・愛澤の安定感を信頼した」と、絶対に負けられない試合でリリーフ・愛澤を起用するという判断をする。水江から愛澤への継投については、「水江が立命戦で3試合ずっと投げていて、低めの変化球というのが相手バッターもかなり意識が強まっていたので、高低で攻められる投手というところで、アンダースローの持ち味を活かすことができる愛澤が適任だった。相手打者が(アンダースローに)慣れていないという点も考えて、水江から愛澤という組み合わせ自体も相性が良い」と分析。実際の試合では当初の継投のプラン通りにはならなかったが、「水江から愛澤への継投を基本プランに置きながら、打順的に愛澤が五回に打席が回ってくるなと思っていて、(愛澤の準備のためにも)六回に徳田(聡・4 北野)を挟むことは頭に入れていた。結局、五回には愛澤に打席が回り、徳田(を起用するタイミング)も、元々桃谷(惟吹・3 履正社)など立命打線のしんどいところで起用することを考えていたので、ちょうど良いタイミングで代えられた」と臨機応変な対応を見せる。劇的な勝利の裏側には、データアナライザ・三原による隠れた活躍があった。

 試合は最終回、二死ランナー無しから伊藤伶真(4 北野)が右中間へ二塁打を放ち、代走に切り札の出口諒(4 栄光学園)が送られる。あの場面について、近田監督は「あとは打つだけという場面だったが、タイブレークも頭にはあって、それでも中嶋(立樹・2 金沢泉丘)を守備で信用しているというところで、思い切って(サードの伊藤を)変えられた。さらに出口が残っていたというところで相手にもプレッシャーがかかる。守るところは守る、攻めるところは攻めるというところで、あの場面で(選手を)きれたことが一番大きかった」と話す。選手層に厚みが出てきたことで終盤に勝負をかけられる強さが生まれていた。加えて、終盤が勝負所と見た指揮官の采配も光った。最終回の攻撃に入る前、近田監督は一段と大きな声を出した。

「ここで取り切るよ」

監督による一声は、チームの士気を一気に高めた。試合後、「タイブレークの練習をしていないというのもあるが、後ろを考えないというのをこっち(監督)は考えるけど選手には考えさせないために、あの一言を入れないといけないと考えていた。そこを選手達がやり切ってくれたのが大きかった」と近田監督は振り返る。

 試合を重ねる度に成長していくチーム。京大ナインは「チャレンジャーの精神」という言葉を頻繁に口にする。これは、近大1回戦に敗戦した時の近田監督の言葉だ。終盤に追いつかれても負けじと立ち向かう姿勢は、まさにチャレンジャーそのものだった。近田監督も「出来過ぎというか、選手がプレーで表現してくれているのが大きい。こちらの考えが浸透してきてくれているのかなと感じた試合だった」と目を細めた。次戦に向けての言葉で締めくくる。「優勝というものが残っている、その可能性がある戦いを出来ることということが幸せだと思うので、そこをしっかり(踏まえて)もう一回、勝つこと、優勝というところを意識してやりたいと思います」

脇 悠大

「京大ベースボール」代表・京大硬式野球部OB(2022卒)。2020秋~2021秋まで京大野球部の主将を務めた。京大野球部を「恒常的に優勝できるチームにする」という主将時に掲げた目標を達成するため、引退後でも何か出来ることはないかと考え、京大ベースボール(学生スポーツ紙)を設立。京都大学初の大学スポーツ紙として、野球部についての記事を書き始める。現役時代は右投左打の内野手。滋賀県・膳所高校出身。2022年度から京都大学大学院農学研究科。

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