昨年、一昨年まで京都大学野球部に所属し、エースとして第一線で他大学と渡り合ってきた弊紙記者らが、勝利試合のターニングポイントと睨んだ場面について、選手や監督に深く掘り下げた質問をぶつける企画。

勝利を手繰り寄せた至極のワンプレーの裏にはどのような意図や思惑、指示、判断、があったのか――

第一回 令和四年春季リーグ戦第一節 対関西大学一回戦

七回表二死一,三塁 

バッテリー 水江(洛星③)-愛澤(宇都宮④) 打者 有馬(近江③) 

【状況】

今年度の京大野球部の開幕戦となった関西大学一回戦。二回に先制されるも四回にスクイズ等で逆転を果たす。六回終了時2-1と京大リードの展開で迎えた七回表、四球と安打で一死一,二塁のピンチを背負う。しかし相手の四番打者、口分田(近江兄弟社④)を打たせて二ゴロに。ダブルプレーを狙った守備も一塁はセーフ。二死一,三塁となおもピンチは続く中で対するは今日二安打の五番有馬(近江③)。昨季ベストナインにも選ばれている有馬は、京大としてはピンチで最も警戒の必要な打者だった。

この場面で今日二安打の有馬に記者らは敬遠策を選んでもよいのではと考えたが、バッテリーの判断は勝負。0ストライク2ボールとボール先行になりながらも、勝負の選択は変えずに見事4球目のカーブを打たせて遊ゴロに仕留める。

この至極の勝負を、バッテリーの二人(水江(洛星③)、愛澤(宇都宮④))とマウンドに指示を伝えに行った近田監督に、ピンチの中での状況判断と指示内容、勝負の意図や思惑を整理してもらった。

マウンド上に集まるバッテリー 愛澤(写真左)、水江(写真右)

・投球前に近田監督が指示を出しにマウンドに向かったが、そこではどのような会話をしたのか

-愛澤

近田さんと水江とは「勝負しよう」という話をしました。

-近田監督

去年の秋季リーグの近畿大学戦の最終回で、ベンチの判断で敬遠策を選んだ後に逆転負けした経験があったので、マウンドに行って水江の気持ちを聞いておきたかったんです。

-水江

僕はこの場面は絶対に勝負という気持ちでした。

・今日二安打の有馬選手に対して勝負を避ける選択もあったように感じたが、その可能性はあったのか

-近田監督

「歩かせる」っていうかな?と思ってマウンドに行ったんですが、水江が「際どいところで勝負したい」と言ってきて、こいつ逃げてないなと思って水江に任せました。

-水江

フォアボールで逃げるのではなく、際どいところで勝負して絶対に討ち取るという気待ちでした。

-愛澤

なので最悪四球でもいいから、変化球で丁寧に攻めていこうという話をしました。

勝負の選択をした水江

・勝負に入る際の心境とバッテリーの思惑は

-水江

甘いところには絶対に投げてはいけないという気持ちでした。

-愛澤

長打は逆転されるので一番避けたいという認識がまず一つありました。そして、変化球はそれまでうまく拾われてはいましたが、変化に合わせるだけのバッティングで怖さは無かったので、変化球中心で攻めるリードをしました。

あくまでも冷静に場況を整理していた愛澤

・二球連続で変化球を見送られ、0ストライク2ボールとバッテリー不利なカウントとなる。

 二球連続で変化球を見逃され、0ボール2ストライクとなる。打者有馬(写真右)、捕手愛澤(写真中)

ここで勝負からの方向転換もあったと思うが、どう考えていたか

-水江

2ボールになってからも意識は変わらなかったです。厳しいところで勝負しにいくという気持ちを貫きました。

-愛澤

自分の中では有馬を三振に取れるイメージが無かったので、早めのカウントで変化球を引っ掛けてもらうのがベストだと考えてました。そしてそれまでのボール2球どちらも変化球を追いかけている見逃し方だったので、変化球を続ければ手を出してくるだろうなと考えていました。

ただ、変化を続けるのは大きな賭けで、しかも4球目はコースが甘くて危なかったですけど、結果的に変化球に手を出させて打ち取ることができました。

変化球を4球続け、4球目のカーブで有馬(写真右)を遊ゴロに打ち取る。捕手愛澤(写真中)

水江は最後まで勝負の姿勢を崩さなかった

この一打席で相手の流れを断ち切ると、八回には二点の追加点を挙げ、水口の好リリーフもあり、見事開幕戦を4-2で勝利した。

グラウンド上での目まぐるしい判断と選択、指示と信託。開幕戦勝利の裏には、厳しい状況でも逃げずに攻めの判断をしたバッテリーと、それを信じた監督の姿があった。

勝負眼①

七回表二死一,三塁 バッテリー 水江(洛星③)-愛澤(宇都宮④) 打者 有馬(近江③)

初球 スライダー ボール

二球目 スライダー ボール

三球目 カットボール ファール

四球目 カーブ 遊ゴロ

原健登

「京大ベースボール」記者。京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士2回生。2020年まで京都大学硬式野球部に所属。野球部時代は主に投手を務めた。脇編集長の熱意に惹かれて何か手伝えることはないかと思い当紙に入局。現役時の夢は、「京大野球部が他大学に単純に実力差で勝てるチームになること」。自分が選手時代に達成できなかった目標が徐々に実現しつつありとても嬉しいです。頑張って記事書きます。

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