京大硬式野球部には、データ分析を専門に扱う部員が2人いる。そのうちの1人が筧敢太(膳所・新②)。学生コーチという肩書きで野球部に籍を置きながら、データ分析を極めようと奮闘する彼の姿を特集する。
データ分析との出会い
筧コーチが野球データ分析と出会ったのは高校時代。彼が膳所高校に入学しようとする春休みに、ちょうど同校野球部が21世紀枠で春の甲子園に出場した。「もともと、野球を観るのが好きでした。」そう語る筧コーチが目にしたのが、同部のデータ班についての特集記事だった。
高校野球ファンの中には記憶に残っている方もいると思うが、膳所高校が甲子園に出場した際、同部のデータ班の存在が話題となった。「データ班なら、野球経験のない自分でも、好きな野球に関われると思いました。」筧コーチはこうして、データ班への入部を決めた。
膳所高校での活動
膳所高時代の筧コーチが主に担当していたのが、打球方向の分析である。県大会で対戦するであろう高校の試合に足を運び、相手選手の打球方向を専門のソフトウェアで分析することで、野手の守備位置にいかすというものだ。
「三塁手が遊撃手の位置に来るような、極端なシフトを組んでいたこともあります。」とは、同高OBの脇悠大コーチ(新修士①)。その他にも筧コーチは投手の分析も行っていたという。
それにしても、野球の強豪校としての看板を出しているわけではない公立高校で、本格的なデータ分析活動が行われていたことには驚かされる。
「高校では、先輩が滋賀大の教員の方と協力し、統計解析ソフト『R』を用いて専門のソフトを開発しました。」と筧コーチは話す。
学生コーチとして
筧コーチは昨年、京大の経済学部に入学すると、硬式野球部に入部した。現在もデータ分析を担当しているが、高校時代とは異なる分野で活動している。
「現在は主務の三原さん(灘・新④)が『ラプソード』(※)を使用されて投球の分析を行っているので、それを手伝っています。また、最近は主にリーグ戦やオープン戦の結果から数字や指標を出す作業を行っています。」

今はほとんどのデータ分析を三原主務が行っており、それを手伝っているという筧コーチ。しかし、4回生となる三原主務は今年限りで引退する。
そうした中で迎える今シーズンへの彼の意気込みを尋ねた。
「去年の秋は様々なことを学んでいく段階でした。今年は2回生になるので、チームの力になれるよう頑張っていきたいと思います。」

高校、大学と経験を積んできた筧コーチがデータ班員として独り立ちすることが、また一つ強いチームへと歩を進めることにつながっていく。三原主務のような「データのスペシャリスト」への彼の道のりは、まだ始まったばかりである。
(※)ラプソード…投球、打球の分析用専門機器『トラックマン』の簡易的な代用品。投球されたボールの回転数などを測ることができる。高価なトラックマンに対し、ラプソードは数十万円で導入でき、トラックマンに近い精度でデータを出すことが可能である。記事へ戻る