「上のステージでも野球を続けたい」[3]
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【歴代打点記録】確実に成長を続ける苦労人、さらなる高みへ [2]

2021秋シーズンを見ていて、愛澤から盗塁を決めるのはかなり困難だと感じた。彼自身も「牽制, クイックで完全に盗まれていない限り、タッチボールさえ投げられればアウトにできるという感触はあった」とその手ごたえを口にしている。今季の盗塁刺6はリーグトップで、他大学の捕手と比べても愛澤の強肩は引けを取らない。
今年夏頃にいくつか参加した社会人練習でも「打撃ではレベルの差を感じたが、肩と守備力なら勝負できる」と好感触だった。捕手転向してまだ一年も経たないが、慣れないポジションへの適応力, シーズンを通して正捕手を務めきった体の強さ, 肩力, 脚力, 振りの強さ, 野球センスなど総合的に考えて、愛澤は上のレベルでも十分にやっていけるだけの素質を持ち合わせている。

しかし、単に野球が上手いというだけでは社会人やプロといった上の世界で生き残ることはできない。野球をプレーすることで給料をいただく社会人やプロでは、チームや会社のことを考えられること, 長い間変わらず野球に向き合い続けられること, 沢山の方々の協力に感謝できることなど、人間性の部分がより重要となる。教育の一環と言われる学生野球とは勝利への価値観も明確に異なるため、ある意味別種目と言っても過言ではない。

愛澤はその点でも上のレベルで野球ができる選手だ。同じチームで野球をするとよく分かるが、愛澤が練習で手を抜いている姿はまず見たことがない。自分の結果が出ていようがいまいが関係なく、毎日真摯に野球に向き合っている。その姿勢は使っている道具にも顕著に表れている。愛澤のミットはいつ見ても綺麗に磨き上げられている。理由を聞けば「使う時に気持ちがいいのはもちろんだが、ミスをした時に道具のせいにしたくない」とプロ意識さえ感じさせられる。
チームを勝たせるという気概も十分だ。自己犠牲ではなく、チームが勝つために自分が出来ることを考えて遂行できる (社会人, 捕手転向, 副主将…)。 また、練習に来たOBや試合を観に来た関係者に対しても必ず自分から挨拶に行く。そうした人間性の部分を愛澤は欠かさない。
プレーをひと目見れば自然と応援したくなる、彼はそんな選手だ。

全三回に渡って京大の正捕手、愛澤祐亮について掘り下げてきた。現状でも十分魅力のある選手だが、まだまだ伸び代十分の二十歳。今はまだ飛躍の過渡期に過ぎない。来年春, 秋のリーグ戦でさらなる成長を見せ、ぜひとも上のステージで野球を続けてほしい。
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【歴代打点記録】確実に成長を続ける苦労人、さらなる高みへ[2]
京大ベースボール 執筆:脇 悠大